成安造形大学
2018年、春 情報デザイン領域始まる。
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情報デザイン領域

編集者、ライター 小西七重

  1. SCENE 1
  2. SCENE 2
  3. SCENE 3
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SCENE 1

本をつくっている間は、取り上げる対象を好きになる。

企画を立てるところから、実際に自分で取材をして原稿を書き、本をつくり上げる編集者、そして、雑誌などで原稿を書くライターという仕事を、東京の編集プロダクションを経て、現在はフリーランスで行っています。本をつくるときは、まず出版社の人に企画を持ち込んで始まることが多いです。企画は、自分の興味があることだけではなく、今これを本にしたら面白そうとか、このテーマなら一冊つくれそうと思ったりするところから始まります。

日本全国の朝市や市の本をまとめた『市めくり』は、私自身が寺社仏閣や城とか地味なものが好きなんですが、暇を見つけては縁日を覗いてたんです。でも、気が付いたら行きたい行事を逃すこともあって、「誰か情報をまとめてほしい! 」ってずっと思ってたということを当時所属していた編プロのボスや出版社の人に話したら「面白いね」となったんです。なので、この本は単純に自分が欲しかったものがかたちになった感じです。

また、考えたテーマで何ができるかをよく考えます。『あたらしい食のシゴト』(タイムマシンラボ編著/京阪神エルマガジン社)という本では、ケータリングやイベント出店の人たちを紹介するだけでなく、出店の準備についてや予算感、つくっているアトリエの設備、出店当日のオペレーション、移動販売用の車、資格などの込み入った情報も紹介しました。

初の編著である『箱覧会』は、箱だけで一冊つくりました。マニアックですよねー。この企画でつくらせてもらったことに感謝です。フルクサスとか、ジョゼフ・コーネルとか、昔から箱モノのアート作品が好きで。自分の生まれた時のへその緒が入った箱を見つけた時に、「そっか、人間生まれた時も箱で始まり、箱(棺桶)で終わるんだ!」ってなりました。

本をつくる上では、対象そのものを大好きになることが大事だと思っています。私自身、影響されやすいのかも、というぐらい自然と向き合った時に好きになりますね。本でもアート作品でもなんでもそうですが、目にした時に、興味ありなし関係なく衝撃が走るものってあると思うんです。それって相手がすごく楽しんでいる具合であったり、熱量の高さだったり、表面的なこと以外の情報が不意に伝わってきた瞬間に「うわっ!」となる。この人、めっちゃ楽しんでつくってるなーって。なので、私がつくったものも、今はまだ自分では満足のいってないところもありますけど、読んだ人が「本当にこれがつくりたくてしょうがなかったんだなあ」と感じる熱意みたいなものが滲み出てしまう、そんなふうにありたいなと思っていますね。面白いなと思うものがつくれる人って、ビジョンが明確で、神は細部に宿るというか、細かい部分までちゃんと考えてある。ちょっとしたことの積み重ねが全体の熱量になっていくのかなと思います。

SCENE2を読む
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SCENE 2

東日本大震災直後に現地で取材、人々の誇らしげな姿を目の当たりに。

これまで携わった仕事のなかで、忘れられないものがあります。千代田区にある文化施設「アーツ千代田3331」に、編集者として関わっていた時の仕事です。この施設は、災害などが起きたとき、地域の避難所になる場所でもあります。2011年に東日本大震災が起こりましたが、このときにアーツ千代田 3331では復興支援プロジェクトが立ち上がりました。そのプロジェクトのなかには、福島・宮城・岩手でいち早く復興に向けて立ち上がった「復興リーダー」たちの声を届けるというものがあったんです。そこで私も取材チームに入れてもらい、現地でインタビューを行いました。そしてインタビュー記事をはじめ、多数の支援活動、アーティストや建築家による支援プロジェクトがどの時点で発生し、どのような活動を行ったかをまとめた書籍『つくることが生きること −東日本大震災復興支援プロジェクト−』が完成しました。書籍が完成したあと、現在でも継続して取材をさせていただいていますが、はじめて被災地を訪れたときの様子は今でもハッキリと覚えています。

このインタビューがきっかけで、取材ではなく、もはや個人的に毎年訪れている場所が岩手県の山田町という場所です。山田町は津波後に火災が発生して、まちのほとんどが燃えてしまったんですね。はじめて訪れたのは2011年7月だったのですが、海に近かった地域にあった神社に鳥居だけが残っているという壊滅的な状況でした。ただ、このまちには「山田祭」という町民が毎年すごく楽しみにしている祭りがあったんです。その祭りの再建に宮司さんが力を入れていると聞いて、話をうかがいに行ったんです。そうすると「9月には祭りをやるから、見においで!」とおっしゃったんですよ。まだ仮設住宅の入居がこれからという時期に。「一体、どんなお祭りなんだろう」と思い、その2カ月後、山田祭を訪れたんです。もちろん、まちは壊滅状態ですし、神輿もありません。祭りは規模を縮小して境内で郷土芸能の奉納が行われたんですが、これがもう、すごかった。「どこからこんなに人が?」というくらい境内は人で溢れていたし、小さなまちなのに郷土芸能の団体がいくつもあるし、小さな子どもから思春期真っ盛りの中高生まで、みんなが祭りに参加していたんです。津波で流されたり、火事で焼けてしまったりして、失った道具や衣装も用意して…。

宮司さんや地元の人は、祭りの光景に圧倒されている私に「まだまだ山田の祭りはこんなもんじゃないから! 来年も来い!」と。翌年は、その時期に大型台風が直撃したんですが、嵐の中、それでもお祭りをやってました。そして去年はなかったお神輿を復活させてたんです。「震災があっても祭りをやったんだから、これぐらいなんともない」って。もう完全に山田の人たち、そして山田祭のファンになってしまって、毎年このお祭りに通い続けています。まちの人も当然お祭りに夢中なので、あんまりみんな写真を撮っている余裕がない。そして震災前の写真を失ってしまった人も多い。ならば私が撮ればいいや!と思い、毎年祭りに参加しながら撮影し、製本して翌年のお土産にしています。まちの様子も少しずつ変わっていっているので、そうした変化も10年、20年経ったときに振り返って見られたらいいなと。ちなみに、まちの人にも本当によくしてもらっていて、名前入りの半纏を用意してもらい、今はお囃子を篠笛で練習中です。

最初、このプロジェクトに参加した時は不安でいっぱいでしたが、私自身が「インタビューをすること」、「原稿を書くこと」という、ちゃんと伝える術を持っていて本当に良かったなと思えた仕事でした。本になってしまうと少し完結したような気持ちになることがあるんですが、この仕事は終わらないもの、それこそライフワークです。取材をさせていただいた方や地域とはこれからも長く繋がることができたらと思います。

SCENE3を読む
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SCENE 3

その道のプロとともに、自分が想像していた以上のものをつくる。

大学生の時は、今の仕事とは全く違いますが、映像分野を専攻していました。特にメディアアートを学んでいましてその頃は制作が楽しかったこともあり、卒業後に岐阜県にある情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に進学しました。

大学だったら興味の近い人と見ているものが一緒なので、感覚的な言葉でも仲間内で通じたんですが、ここでは、エンジニアをやっていた父と同じぐらいの歳の人とか、音楽を学んできた人とか、自分とは違ったバックボーンを持った人たちばかり。雰囲気やノリでは話が通じなかったのは衝撃的でした。そうした多様な人たちと一緒にプロジェクトをやっていくことは、自分のことを見直す機会としても、コミュニケーション力をつける意味でも、とても勉強になりました。そして何よりも、プログラミングにしろ、回路の設計にしろ、自分が持っている以上の能力を持った人がたくさんいるので、制作のクオリティが上がっていくし、自分が想像していた以上のものが生まれていくんです。

そんななかで、ひとりでつくることに限界があって、他者と一緒につくる方が面白いなら、ひとりでつくらなくてもいい、自分はアーティストじゃなくてもいいと思うようになりました。アートに関しても、アートの外側にある世界のほうが圧倒的に広く、そこと切り離して捉えることはできないないのでもう少し外側から見ていたい。そう思い、卒業後はもともと雑誌や本が好きで「紙媒体ならいろんなジャンルの人を結びつけることができるかもしれない」と、デザイナー、カメラマンなど、その道のプロとともに本をつくる、編集の道に進もうと決めました。学生の時からキュレーションにも興味があったことや、文章を書いたり、ページの構成を考えたりするのも好きだったので、アートの世界から全くの方向転換という感じは特になかったですね。

調べるうちに、編集の仕事はどうやら出版社だけでなく、編集プロダクションという会社でも行われているらしいということで、東京の編集プロダクションに就職。最初の会社では、シルバーアクセサリーや『論語』といった、これまでまったく関心のなかったテーマばかりでしたが、それでも絶対に自分の企画で1冊つくると入社時に決めて、入社2年後にやりたかった企画を1冊にすることができました。その後、退社をして尊敬する編集者の竹村真奈さんと出会い、一緒に仕事をさせていただく機会に恵まれました。ライターとしてではなく、編集者のポジションで著書を出している稀有な方と出会ったことで、音楽や美術などといったジャンルを絞って仕事をするのではなく、いろんなテーマに合わせて制作する編集のスタイルでやっていこうと思えましたし、著書『箱覧会』もつくることができました。編集プロダクションでは実務的なこと、作業の流れをひと通り身につけましたが、「編集者とはどういう仕事か?」、「編集とはどういうことか?」そういったことはすべて竹村さんから教わったと思います。

本をつくるときには、主にデザイナー、カメラマンというプロと一緒につくるのですが、そのやりとりも楽しく、それぞれが良いものをつくるために全力を尽くす姿勢にとても刺激を受けます。『市めくり』という本では、表紙を果物の写真にしたいが、あと少しインパクトが欲しい、ということで、デザイナーさんが野菜などを包んでくれる新聞紙のような帯のデザインを提案してくれたんです。さらに本はつくっても、出版社で本を売ってくれる人がいないと形にならないなど、常に人と関わってつくっている感覚です。

編集者の仕事としては、まず自分で素材を集めたり、調べてストックしておくことが必要ですから、いろんな場所に行って面白いネタを探したりして貯め込んでおきたいですね。今はある程度ネットで情報が得られるけど、そこ現場でしか見られないものがあるから、きちんと自分の目と耳で得て、感じた熱量のある情報を大事にしていきたいなと思っています。外国人をはじめ観光客も意外な日本の地方に行ったりしているわけで。そこで考えると…例えば、「日本一めんどくさい旅」の本なんてどうでしょう。東京から日帰りでどこまでいけるかツアーとか、すごくきれいな夕日を見るのにバスの都合で15分しか滞在できない旅とかを紹介するニッチな内容なんですが…。

WORKS

書籍『市めくり』(タイムマシンラボ編著/京阪神エルマガジン社)編集・執筆
書籍『箱覧会』(小西七重編著/スモール出版)編集・執筆
書籍『つくることが生きること -東日本大震災復興支援プロジェクト-』(中村政人著/一般社団法人非営利芸術活動団体コマンドN)編集・執筆

PROFILE

プロフィール画像
編集者、ライター
小西七重

1980年生まれ。2004年、成安造形大学映像クラス卒業。2006年岐阜県立情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修士課程修了。編集プロダクションを経て現在フリーの編集者・ライター。著書に『箱覧会』(スモール出版)、共著に『市めくり』のほか『あたらしい食のシゴト』(京阪神エルマガジン社)がある。

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