成安造形大学
2018年、春 情報デザイン領域始まる。
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情報デザイン領域

写真家 神藤 剛

  1. SCENE 1
  2. SCENE 2
  3. SCENE 3
イラスト
SCENE 1

撮影中、頭はフル回転で動いてる。コミュニケーションしながら。

フリーランスのカメラマンとして、雑誌や広告、音楽のアーティスト撮影などを行っています。広告や音楽の撮影は、依頼主である会社、広告代理店、アートディレクターやデザイナーなど複数の人が関わってつくる仕事になります。時に分刻みでスケジュールが埋まっているようなアーティストの場合、段取りや時間、環境の変化といった様々なことを頭に入れながら撮影します。

例えば、CDジャケットの撮影を担当させてもらった欅坂46の撮影の時には、CDジャケットが4パターンあり、4枚でひとつの物語が成立するように数パターン撮影しました。

どんな状況で撮影するのか、窓の外は昼なのか夜なのか、天気は晴れ? 雨? つくりたいイメージ的に、あえて雨が降っていた方がいいのではないか。窓の奥に街の光が反射してたら、物語の想像力が膨らむのではないか。僕の場合、つくりこんだ情景も、「この場所って現実ではどういう空間にあるんだろう」と考えて詰めていきたくなるんですが、そのあたりはアートディレクターとともに考えていきます。ただ写真を撮影するだけでなく、仕上がりのイメージをチーム全体で共有することが大事。緊張感もありますが、同じ方向を向いているチームで、新しいものをつくり出しているような感覚がとても楽しいですね。

また、雑誌『SWITCH』の撮影では、音楽とビジュアルというテーマで、僕とクリープハイプの尾崎世界観さんと2人でつくって欲しい、との依頼だったんです。前々日には2人でロケハン(下見)にも行って、完全に2人だけで撮影を行いました。僕にとってはもちろん、尾崎さんにとってもいい写真になったと言ってもらえて嬉しい経験でした。

案件にもよるのですが、僕は撮られる側にも自由度があったほうがいいと思うので、具体的なポーズを取ってもらうよりも「こんな感じ」と被写体に委ねる部分も多いですね。何気ない会話だったりするものから、僕も相手も互いに新しい思考につながったりする瞬間が見えた時には、「やってよかったな」と思います。

単純ですが、依頼主でも被写体の方でも、初めての人だとしても「いい写真だったね」とか「面白かった」とか言われることが嬉しいですね。たくさんの撮影をやらせてもらえるようになったのは、いろんな方々のおかげですが、今の僕にとって、他者に喜んでもらうためのツールが写真です。

SCENE2を読む
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SCENE 2

ほめられたことがひとつの自信になって、写真の道へ。

大学1年生の終わり頃で2年生からのクラスを選択する際に、先生に「あなたの写真いいね、写真クラスを選択したら?」と言われたことがきっかけです。単純ですが、嬉しかったことを覚えています。ほめられたことが自信になっているという部分は当時も今も同じ。大学卒業後も、写真でいけるところまでチャレンジしようと思いました。

いざ写真の道に進むならと考えてみたら、普段自分が見てるような、雑誌や広告といった媒体で仕事をしたいと思ったんです。ちょうどタイミング良く姉の知人でカメラマンをしている方が、出身だった東京のスタジオの募集を教えてくれて、採用試験を受けたんです。面接では、全紙の印画紙にプリントした作品を20枚ほど持って行きました。それを床に並べて「でかいなあ」とか言われて(笑)。

そうして、晴れて東京でスタジオマンとして働くことになりました。実は大学では日常のスナップばかり撮影してたクチなので、ストロボの使い方とか、絞りのこととか、その時点ではほとんど何もわからないままでしたから、大変でした。まず3カ月で、ひと通りスタジオで撮影するための照明や機材のセッティングを1時間以内に組めるようにならないといけないんです。できなかったらクビ。これでもしできなくて、3カ月で地元に帰ったら格好つかないなと必死でした。同世代の若い人たちとともに、知識や段取りを覚える場所、3年で契約終了(つまり卒業することが前提)という意味では、学生の延長みたいな感覚でしたね。

働いて3年が過ぎた頃、ふと我に返ったときに、このまま独立してカメラマンになっても、社会人としての礼儀、名刺の渡し方など何も知らないぞ、と思ったんです。まだ独立するタイミングではないと思い直して、憧れていた写真家の鈴木心さんにお願いして、スタジオを出た後、アシスタントにつかせてもらえることになりました。

アシスタントの仕事は、師匠である心さんの車の運転から買い出し、機材の準備と何から何までで、大変だったことは言うまでもないですが、ちょうど師匠の仕事も忙しくなってきた時期で仕事の幅も広く、雑誌、広告、NHKの大河ドラマのポスターなど、著名なADの方々との仕事の現場を間近で見ることができました。クライアントの事、制作物の意図を踏まえ、エンドユーザーにビジュアルで適確に伝えること、その上でどうクライアントにプレゼンテーションするのか、そしてそれを実現できるスキルなど、プロとしてのやり方の8割は、ここで学んだことが活きています。

2年経って、「神藤くん、そろそろいいんじゃない」と、晴れて独立しようとなった時に、営業をするポートフォリオがないことに気づくんです。アシスタントの時は基本仕事中に自分の写真は全く撮れなかったですし、業務が終わる頃は夜でしたからほとんど撮影はできていませんでした。どうしようかなと思っていたんですが、最初は、師匠と一緒に仕事していた方が、僕の独立を聞いて仕事を頼んでくれることもありました。それはまだ自分の写真ではなく師匠の名前で頼んでくれた仕事ですから、失敗はできない緊張する場面。しかし逆に自分を知ってもらうプレゼンのチャンスでもあると思って、取り組んでました。なので、あまり営業を意識することなく、少しづつ人に見せられる仕事の写真を撮りためていくことができました。

SCENE3を読む
イラスト
SCENE 3

撮りたいと思う一瞬の感覚を信じ、新しいものも恐れずに、触ってみる。

「『早い、安い、うまい』。最初は牛丼チェーン店みたいになったらいいんじゃない?」。これは師匠に独立した時に言われた言葉ですが、いい写真を撮ること、メールや仕上がりの連絡などのレスポンスが早いこと、それができればお金は後からついてくるようになる。これって結局、相手のことを考えることじゃないかな、そしてそれは被写体のことを考えることでもあると。その点に関して師匠はとても厳しかったですね。最近「よくこんなにたくさんの仕事をこなせるな」と言われるんですが、それはその時の賜物です。

「お客さんにも被写体にも、新しいものを提案することは一つのサービスである」というのも師匠の言葉で、自分なりに考えて撮影してました。例えばインタビュー撮影でも、編集者が欲しいカットはマストで撮影しつつ、それに加えて自分ならこんな視点で撮影する、というのも合わせて撮影するようにして。ある鼎談で、インタビューカットの撮影をご依頼いただいたんですが、その時の会話に合わせ自分だったらこのビジュアルがあると想像力が膨らむなとか、ただ顔を撮るのではなくその時の風景を自分なりに撮る事をしました。結局使われなかったとしても、「良かったよ」と言われる時って「個人の視点で撮影したものも加えたとき」でした。

撮りたいと思う一瞬の感覚は、学生の時にほめられた写真を撮った時と一緒です。当時は日常のスナップを撮ってましたけど、それを人物に置き換えることができたのは師匠の仕事を見ていたから。どうやってその人とコミュニケーションするか。目の前の他者と関わって、どう撮るか。きっとこれからは人間力だと思うんですよ。技術も大事ですけど、その場所でその瞬間に誰とどうコミュニケーションをとるのか。どういう時間をつくれるのかが一番大事な気がしてます。

今、独立して5年ですが、必死に走り続けた甲斐もあって去年はたくさん撮影のお仕事をいただきました。なかには映像撮影の仕事もあり、写真家的な目線ですが、自分なりの映像表現にも挑戦しました。これからも、自分だから頼んでもらえる仕事をもっと増やしたいと思っています。

             

(インタビューは2017年3月に行われたものです)

WORKS

欅坂46「サイレントマジョリティー」CDジャケット写真
欅坂46「世界には愛しかない」CDジャケット写真
欅坂46「二人セゾン」CDジャケット写真
欅坂46「二人セゾン」アーティスト写真
岡崎体育アーティスト写真
雑誌『SWITCH』よりポートレート写真(尾崎世界観)
雑誌『BARFOUT!』よりポートレート写真(広瀬すず)

PROFILE

プロフィール画像
写真家
神藤 剛

1983年、大阪生まれ。2007年、成安造形大学写真クラス卒業後、松濤スタジオ入社。写真家鈴木心に師事。2012年独立。ポートレートを中心に広告、CDジャケット、雑誌、Webにて活動中。
http://shintotakeshi.com

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